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1969年、昭和まっただ中の西麻布に、
私たちは赫い灯を点しました。
CHEZ FiGARO.
それは小さなネオンでした。
20あまりの席数と、赫いビロードのカーテン。
豪華でスノッブなフレンチのイメージとは対極の
どちらかといえば家庭的な、
フランスの大衆料理に近い私たちのビストロのスタイルは
当時とても驚かれ、珍しがられ、
けれどもほんとうに多くの方が受け入れてくれ、
そして愛してくださりました。
開店当初より変わらないメニューがあります。
鶉のファルシー。
私たちがこのお皿を造り続けるのは、
皆様に愛していただいたという事実に応え続けるために
他なりません。
変わらずにいる、ということ。
皆様と共に歩んできた時間は、いま、
50年を迎えようとしています。
その幸運に身を震わせる一方、その長い時間は、
私たちをとりまく多くのものを変えてもきました。
食生活は変わり、情報も溢れ、
様変わりした街並みと、その移り変わりの早さと……。
フランス文化ももはや珍しいものではありません。
旧いものを置き去りにするかのような時の移ろいは、
いつの日か、この赫をも色褪せさせてしまうのでしょう。
だから、いま、
私たちも少しずつ変わっていこうと思います。
もちろん、皆様と積み上げてきた幸せの歴史は
決して失くさないように。
変わらないことと、変わっていくこと。
相反する二つのバランスを大切に、
私たちはまた、新たな時代を歩んでいこうと思います。
皆様と、これからも素敵な記憶を紡いでいくために。
まだ見ぬ、新しい世代と出会うために。
令和元年 -秋-
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